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「日本におけるK値の推移について」(抜粋)

このページの内容は、「K 値で読み解くCOVID-19の感染状況と今後の推移」からの抜粋です。詳細は上記論文を御一読されることをお勧めします。
なお、K値に関する解説動画もこちらにあります。

日本におけるK値の推移について

論文中で示したとおり日本における K 値の推移は極めて安定で、ヨーロッパのいくつかの国で見られたような社会活動の制限等の施策による感染収束速度の増加もなければ、米国で見られるような感染再拡大の兆候も見られない。4 月 3 日から 24 日にかけては、傾きが-0.0283の直線でよく近似され、それ以降の推移も k=0.9185 の予想線に沿って推移している。このまま順調な推移が継続すれば、5 月中旬には多くの国で感染収束宣言が出ているレベルであるK=0.05に達するであろう。
次の図 3 に直線によるフィット、そのフィット結果から求めた 4 月 25 日以降の予想曲線と観測値を示す。d=0 が 4 月 1 日に対応し、d=30 が 5 月 1 日に対応する。

Changes in K value in Japan

As shown in the paper, the transition of K value in Japan is extremely stable. There is no increase seen in the United States nor an infection rate convergence due to measures such as the restriction of social activities seen in some European countries. There is no sign of such re-infection. From April 3 to 24, the slope is well approximated by a straight line of -0.0283, and the subsequent trends have also followed the expected line of k = 0.9185. If the situation continues smoothly, it will reach K = 0.05, in mid-May , the level at which declarations of convergence of infection have been issued in many countries.

Figure 3 below shows a straight line fit, the forecast curve obtained from the fit results and the observed values after April 25 . d = 0 corresponds to April 1st and d = 30 corresponds to May 1st.

日本の新型コロナの死亡率は、世界基準と比べてどこまで高いのか?

ウイルスには感染性と致死性の2面があって、前者で日本はうまくやっているが致死性ではそうでもない。うまくやっているのはどこか?

これを以前レポートしたが、善戦している台湾やシンガポールなどが抜けていて、自分ながら不満だった。

問題は死者数を32以上に限定したことだ。そこで今回は死者数4以上で調べ直した(死亡者3以下の国は今回も除外する(57ヶ国、人口で3.5億人))。

分類する指標に最近話題のK値(=直近1週間の感染者数/累積感染者数)を使う。

まず感染を封じ込めた国として、K<0.1 の77ヶ国(人口:29.2億人)を調べると、表のようになる。

めでたく台湾が入る(死亡率:1.59%)が、トップはアイスランド(死亡率:0.55%)だ。

アイスランドは、感染への初動が非常に早く、かつ、人口1,000人当り170回のPCR検査をした国である。感染者全員を見つけ出し適切な処置を施せば、新型コロナの致死率は1%を切ることができるということだ。

まあ、分母を大きくすればそこまで行くということなのだが、限界値を実績で示したことは重要だ。

感染者の8割は無症状~軽症なのだから、治療が本当に必要な患者だけを選び出す究極の検出手段があったとすれば、死亡率は 0.55%/20% = 2.8% となということだ。

逆に言えば、2.8% 以上の死亡率の国では、死なせなくてもよかった命があったということだ。

表で2.8%以下の国々は、そうしたことがあったとは言えない国々だ。

ここに日本は入っていないが、ダイヤモンド・プリンセス号は入っている。ということは、乗船者数千人に対象を絞れば、日本には対応能力があるが、国民全員となると、対応する組織力がないことを物語っている。

コロナの感染状況の状態遷移確率を計算してみた

世界の週ごと国ごとの感染状況を4のべき乗で9段階に分類して、2月23日から5月9日までの11週間について、状態遷移確率を計算してみた。

例えば日本は、4月22日に3日平均感染確認数が256を超えたので、以降Class-5(256以上1024未満)に分類されるが、Class-5の国々がClass-4に戻れる確率は8.3%しかない というように見る。逆にClass-5の国々がさらに進んでClass-6以上に進む確率は、ちょうど倍の16.6%(=15.8%+0.8%)ある。

コロナは「行きはよいよい、帰りは怖い」世界なのだ。

ちなみに、日本を地方単位で捉えると、東京・大阪・北海道がClass-4で、それ以外の地域はClass-3以下だ。

状態遷移確率計算のもとになった実数値と、具体的にどの国がどの状態にあるかの表を添付しておく。

日本の先行事例となっているオーストリアのコロナ・パンデミックへの対応状況

このページは、オーストリアのコロナウイルス・パンデミックに関する4月26日付けの英文のWikipediaのページを、Google翻訳し、されに修正を施して若干読みやすくしたものです。詳細は以下の原文を参照してください。https://en.wikipedia.org/wiki/2020_coronavirus_pandemic_in_Austria

2019〜20年のコロナウイルスのパンデミックは、2月25日にオーストリアに広がったことが確認されています。24歳の男性と24歳の女性がイタリアのロンバルディアから旅行し、 インスブルックの病院で治療を受けました。

背景

2020年1月12日、 世界保健機関 (WHO)は、 2019年12月31日にWHOに報告された新規のコロナウイルス中国 湖北省 武漢の人々の集団における呼吸器疾患の原因であることを確認した。

COVID-19の致死率は、2003年のSARSよりもはるかに低いが、 感染力は著しく大きく、総死亡者数もかなり多い。

イベント

2020年2月25日、 オーストリアCOVID-19の最初の2症例を確認しました。イタリアのロンバルディア出身の24歳の男性と24歳の女性で、陽性反応が出て、 チロルインスブルックの病院で治療を受けました。

2月27日、 ウィーンに住む72歳の男性は、 SARS-CoV-2の検査で陽性になる前に、インフルエンザの症状があり、10日間、Krankenanstalt Rudolfstiftung病院にいました。 その後、カイザー・フランツ・ジョセフ病院に移送されました。 陽性反応を示したカップルと症状を示していた彼らの2人の子供が、カイザー・フランツ・ジョセフ病院に入院した。 家族は以前、イタリアのロンバルディアで休暇中だった。 2月28日、1人の子供、15歳の少年が陽性反応を示した。 この病気のため高校では、4人の教師と、2003年から2005年生まれの23人の生徒が隔離のために家に返されるという予防措置が取られました。 

3月1日から、ドイツと北欧諸国の当局は、チロルのスキーリゾートの町イシュグルをコロナウイルスの主要なホットスポットとして特定しました。 数百の感染が最終的にこの町にさかのぼって追跡されました。感染は2月下旬から発生していたのです。初期のリスクを軽減した後、チロル当局は3月13日に町全体を検疫に入れました。

2020年3月10日、政府はすべての大学が遅くとも3月16日までにクラスを終了すると発表しました。 500人を超えるすべての屋外イベントと100人を超えるすべての屋内イベントはキャンセルされました。 14歳以上のすべての子供は3月15日から、13歳以下のすべての子供は3月17日から家にいるように命じられました。 これは4月4日まで適用されました。イタリアからの入国制限が確立されました。 政府は一般の人々に社会的な接触を避けるように要請し、さらなる制限がまもなく行われることを発表しました。 

2020年3月12日、オーストリアはCOVID-19の最初の死亡を確認しました。ウィーン出身の69歳の男性がウィーンのカイザー・フランツ・ヨーゼフ病院で死亡しました。 

2020年3月13日までに、確認された症例は422人でした。 

COVID-19に感染した可能性のある人は、感染のリスクを減らすために、いかなる場合も医師または外来クリニックに行くべきではなく、代わりにヘルスケア番号1450に電話するように指示されました。 3月15日、パンデミックを前にして、他の日曜日の約70倍の電話がありました。 

3月15日、5人以上の集会の禁止も発表され、3月17日からレストランの閉鎖が命じられました。 さらに、 チロルの総督であるギュンタープラッターは州全体で1週間の封鎖を発表しました。 チロルの住民は、食べ物や薬の購入、医者への訪問、現金の引き出し、犬の散歩などの必要な理由を除いて、自宅に留まる必要がありました。 

3月16日、禁止措置は全国に拡大され、外出するには次のいずれかの理由が必要とされるようになりました: 

  • 必要な業務上の活動
  • 必要な購入(食料品または医薬品)
  • 他の人を助ける
  • 外で、単独で、または同じ世帯に住む人々と一緒に活動する

当局は、これらの制限は警察によって積極的に実施されていると述べた。

3月27日、連邦保健大臣ルドルフアンスチョーバーはオーストリアでパンデミックが2020年4月中旬から5月中旬の間にピークになると予想されると発表しました。

3月30日、オーストリア政府は、4月6日から、店に入るすべての人がフェイスマスクを着用する必要があると発表しました。

3月30日、オーストリア政府はランダムテストを実施すると発表しました。 

4月1日から4月6日まで、ランダムテストはSORA研究所によって実施され、ウイルスの影響を受けた地域でランダムに選択された2000人の候補者に連絡を取りました。 1544人の候補者がテストされました。 この研究に基づいて、病院に入院していない集団における感染の有病率が再計算され、その結果、推定値は約0.33%でした。 結果は4月10日に発表されました。

4月14日、公共交通機関でもフェイスマスクの着用が義務付けられました。 同時に、400ヘーベ未満の小売店やホームセンターなどの店舗は再開が許可されました。 

政府の防止策

3月16日 外出禁止措置(上記参照)。自宅でできないすべての必須でない業務の停止。

3月17日、国境検問に加えて、オーストリアはイタリア、中国の湖北省、イラン、韓国からのすべての入国を禁止しました。ただし、コロナウイルスの影響を受けていないことを確認した4日以内の診断書を持っていた人は例外です。 

3月27日、これ以上の防止策は計画されていないことが発表されました。 

3月30日、政府は口と鼻を覆うフェイスマスクの着用を義務付ける計画を発表しました。 4月6日以降、これはスーパーマーケットに入る人にのみ影響しますが、近い将来、より多くの公共の場所に拡大されます。 

アジアの主要国での死亡数推移

 欧州や米国が厳しい状況にある中、約40億の人口を擁するアジアで感染状況がどう推移しているかをグラフにしてみた。

 中国の1日当りの死亡数は、2月15日にピーク(156)を打ってから長期の漸減傾向にあり、3月21日以降一桁で推移している。

 日本と韓国ではともに早い時点(それぞれ2月19日, 2月20日)で死者が出たが、その後いずれも1日当りの死亡者数を比較的低くに抑えてきている。

 一桁を超える死亡数を記録したのは、インドネシア(3月9日)、韓国(3月20日)、フィリピン(3月29日)、インド(4月3日)、パキスタン(4月5日)である。 この内、インドがここ数日数字を急速に伸ばしていて心配される。

 インド以外の国々では4月6日現在1日当りの死亡数は一桁に抑え込まれていて、欧米のような状況の急速な悪化は見られない。

日本が学ぶべき事例を求めて 新型コロナ感染状況を4地域に分類して考えてみた

「日本はこのままだと3週間後には中国のようになる、イタリアのようになる」とか人々を煽るような発信が多いが、本当だろうか?

 政府が本当に何もしなければ急速に悪化することもあるのだろうが、世界にそんな政府は見当たらず、ほぼ例外なく右往左往している。その悪戦苦闘の結果としての各国の感染状況で国々を4地域に分類してみた。悪戦苦闘にも学ぶべき成果がないとは言えないからだ。

 各国のWHOへの申告値は毎日大きく変動する。報告者も人間なので休息をとることもあるのだろう。そこで以下の尺度で分類した。

 死亡数の3日間の平均値が
A地域: 100超 (2020-04-02現在、8地域)
B地域: 10超  (同じく11地域)
C地域: 5超  (同じく7地域)
D地域: 5以下 (同じく181地域)

A地域:3日間の平均で死者が毎日100人超発生している地域

 A地域の多くの国々では医療崩壊が進みロックアウトが行われている。
 その先駆けである中国ももちろん1月からA地域だったが、2月26日にB地域へ、3月19日にC地域へ、3月27日にD地域へと終息してきた。1月23日の武漢封鎖後34日間で最悪の状況を脱してB地域になり、さらに32日かけてC地域となった計算だ。
 オランダとベルギーは、国としてはB地域となるが、文化的にも地理的にも近く感染推移も類似しているのでルクセンブルクと合わせてベネルクスとして集計した。
 ドイツは善戦が伝えられていたが、死者数では3月31日にイランを超えた。善戦したのは、初期段階で大量の検査を行ったことにあるとされているが、この方法が有効なのは感染の初期段階にかぎられるとクラスター対策班の押谷教授が指摘している(https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf)。
 日本のニュースでは、A地域の状況が盛んに報道されるため、それらとの比較で日本の対応が議論されがちだ。しかし、この最悪の状態に至らなかった国々が大半だ。学ぶことがあるとしたら、踏みとどまっている国々にこそあるのではないかとも思うのである。好奇心と謙虚さはこういう時こそ大切だ。

B地域:3日間の平均で死者が毎日10人超発生している地域

 ロックアウトと医療崩壊のぎりぎりの国々だ。
 スイスの昨日(4月1日)の死亡数は78人であり、医療崩壊の瀬戸際だろう。Le Mondeの3月20日付報道から試算した「死亡数の3倍の重症者がいる」なら、それは234人であり、それに日々対応するのに病院はてんてこ舞いだろう。
 イスラム圏に属するトルコが、イランと同じ道を歩むのかは注目される。同じイスラムでも、宗教指導者の力はあまり強くない。同じことはインドネシアについてもいえるのかもしれない。
 スウェーデンは、感染スピードを抑えながら集団免疫で乗り切ろうとする数少ない国だ(WSJ 2020-04-01)。同じ戦略だった英国では、感染スピードを抑えきれずにA地域入りしてしまった。スウェーデンの英国との違いは住人の多様性が限られていることだ。ほとんどの人々は個人主義的で、感染が広がりやすい大家族はない。政府の打ち出す施策に従って人々がウイルスに対抗できるている。ただ、ソマリア出身の移民のように大家族でくらす人々では死亡者が多くでている。
 新型コロナに対しマスクの有効性が注目されていて、「外出にはマスク着用」を義務づけたのがオーストリアだ(WSJ 2020-04-01)。旧オーストリア帝国の国々の中にも、同様の措置を取る国々が出ている。
 マスク着用国のインドネシアは、3月19日にB地域入りしたが、その後、大きく状況悪化せずに踏みとどまっている。このまま踏みとどまることができれば、日本にとって貴重な教訓になるだろう。
 どの国がこのまま医療崩壊せずに踏みとどまるか、あるいは、感染スピードを抑えきれずにA地域入りするかが注目される。

C地域:3日間の平均で死者が毎日5人超発生している地域

 1日当りの死者が5人から10人に踏みとどまれている国々だ。
 この地域は周辺の国々に比べ状況は悪くないため、「感染拡大が落ち着けば、4月半ばの復活祭(イースター)休暇明けに外出自粛などの制限を緩和する(デンマーク首相)」などの希望的な発言や、自国の政策を自慢する国すらもある。
 ここ数週間のウイルスとの闘いで、自国の医療システムの能力と政府規制とのバランスの中でまずまずの成果をあげ、政府も国民もある程度の余裕があるのだろう。
 ただ、数値を詳しく見ると、死亡数に増加傾向が見られないのはマレーシアだけであり、今後、政府の対策は二転三転する可能性がある。多分、この臨機応変に対応する柔軟性が政府と国民にあれば、状況はそんなに悪くならないかもしれない。

D地域:3日間の平均で死者が1日5人以下の地域

 世界の国と地域の大部分はいまだこのD地域に属している。
 ここには、中国のようにやっと終息しつつある国もあるし、日本や韓国のようにしぶとく感染を抑え続けている国々もある(ちなみに日本の死亡数は3日平均で1.7)。
 これら中国とその周辺のマスク着用国を除くと、D地域のほとんどの国々は中国から地理的・文化的に非常に離れていることが、今回、幸運に働いているように思える。

 その抱える人口から、最も注目されるのは、インドだ。

 そのインドと日本を比べると、インドの感染確認数が10を超えるのは3月5日で、日本の2月初めと比べて1カ月の遅れがある。武漢からインドへの直行便がないのも幸いしただろう。
 日本の最初の死者は2月14日だったが、インドでは3月13日で、やはり1カ月遅れだ。感染は中国から直接ではなく、中東や米国の印僑経由でもたらされているのではないだろうか。
 インドは中国から遠い国であり、どうなるかはこれからだ。
 ちなみにインドと日本の死亡数の推移をグラフにした。すでにインドは死亡数で日本を超え始めている。1カ月前の3月1日のイタリアの死亡数は8である。インドはこの数値を1カ月遅れで昨日超えた。

「日本のコロナの謎」検査不足か健闘か、欧米注視 日本の順位をグラフにしてみた

時事ドットコムニュース に、日本は検査数が少ないわりに感染状況が比較的穏やかなのは何故か、ドイツやWHOが注視していると載っている。

それで、以前から気になっていたことだが、感染状況での日本の世界順位をグラフにしてみた。

感染確認数も死亡数も、当初は中国に次ぐ位置にあったが、徐々に順位を落としている。

3月24日現在、感染確認数が世界25位にまで落ちているのは、確かに検査努力が足りないせいかもしれない。でも、死亡数が世界14位まで下げているのは決して悪いことではない。いずれも、2月初めは中国に次いでメダル候補の位置にいたのだ。

日本にはラッキーな面もある。

感染拡大が中国のように宴会シーズンに重ならなかったことや、たくさんの人が集まる宗教行事の日程にも重ならなかったことだ。初詣時期に重なっていたらどれだけ深刻になっていただろうか。

リスクを避ける日本の文化が感染防止に機能しているのかもしれない。

日本人のほとんどの感染者は誰にもウイルスをうつしていない。テレビの報道によると85%とからしい。

オランダはコロナ対策遅れで状況が悪化し保健相が倒れて辞任したが、遅れた対策とは「握手の禁止」だ。最初の感染者発見から12日目のことだった。でも、こうした措置は日本では必要ない。日本人は心のふれあいは大事と思っても、体でのふれあいには躊躇しがちだ。

何にせよ政府の対策はいつも後手後手にまわることに我々は慣れている。だから日常的にあまりリスクをとらないようになっているのかもしれない。

インフルエンザが流行しだすと日本人はみんなマスクをし始める。うつされたくないし、うつしたくない。それに、マスクをしないで咳やくしゃみをすると、周りから白い目で見られる。それが、我々日本人には気になる。マスクをしない日本人もいるが、どちらかというと少数派だ。

ウイルスを他人にうつさない対策としてマスクは優れている。うつされたくないと思ってつけるマスクが、知らず知らずのうちに感染防止に役立っている。

マスクだけではない。車内で大きな声で話したり、携帯電話をかけるのもはばかられる雰囲気が日本にはある。

まわりの目を気にしながら、我々は日常的に相互に自己規制しているのだ。

こうしたことに加えて、日本人は中国人ほど政府の指示に従わないから、海外渡航歴がなくても症状があれば早期にコロナと診断する優秀な医師たちがいた。機械的に大量の検査をすれば良いというものでもないのだ。

中国のように巨大権力に頼らなくても、日本人は何万年もこの列島で生きのびてきた。その生き延びてきた経験が日本の日常的な習慣や文化となって今機能しているのかも知れない。

新型コロナウィルス 国別の感染状況の推移

新型コロナウィルス感染による各国の死者数が急増しています。
その最近1カ月の推移を二つのグラフに分けて示しました。

最初のグラフは、最近の死者数が最も多い10ヶ国です。
各国は自国の医療システムの崩壊を避けることに必死ですが、これらの死者数の背景にどの程度の患者がいるのかを考えてみました。
Le Mondeの3月20日付報道によると、感染確認者10,995、入院者4,461(内重症者1,122)、退院1,300、自宅隔離5,000、死者372です。死者数の12倍の入院患者、同じく3倍の重症者がいる計算です。この比率で単純に推測すると、昨日1日の新たな入院者数は、死者数(112)の12倍の1,300人あまりということになり、その4分の1の336人が重症だということです。

グラフを見ると1日当りの死者数が50人を越えた辺りから、各国とも状況が急速に悪くなっています。それは、1日当りの新たな患者数(推定値)が600人であり、新たな重症者が150人という状況です。それが起きたのは、イタリアで3月9日、イランで3月11日、スペインとフランスで3月16日です。
米国も3月20日に、英国も3月22日に1日当りの死者数が50人を越えていて、非常に危険な状況にあると思われます。

先頭集団に続く12ヶ国の推移を図示したのがこの図です。
東アジアやイラン、欧米の国々に続いて、イスラム系のトルコ、インドネシア、アルジェリアと南米のブラジルが危険水域に近づいてきています。

東京オリンピックを予定通り本当に開催できるのか?

政府やIOCはオリンピックを予定通り開催すると言い張っている。

確かにこの状況で開催できれば奇跡であり、安倍晋三の名前は世界の歴史に残るだろう。では、それが本気だとしたら何を意味するのか考えてみた。

海外から感染した観客が7月の日本にたくさん来るわけだから、日本人の大半はそのころまでにウイルスに対する抗体を持っていなければならない。国家としてのウイルス抵抗力がオリンピック開催の前提なのだ。

国民の x% が一旦感染して抗体を作って快復したとすると、ウイルスの日本での感染力はその時点で (1-x)% に下がる。例えば、x = 66% とすると、感染力は 33% に下がるということだ。

オリンピックの会場や宿泊施設等々付近にいる日本人は何人ぐらいなのだろうか?仮に6千万人とすると、その 66% は 4千万人だ。新型コロナウィルスは、感染しても80%の人は発症しないから、発症するのは800万人ということになる。日本には有床の医療施設が約15,000ある。800万人をこの施設でこなすには、1施設当たり533人の患者に対応する必要がある。

これを7月までの4か月間120日で割ると、4.5人/(日・施設)になる。こう考えると、まったくの夢物語ともいえないのかも知れない。

ただ、問題は死者がどれだけ出るかだろう。

医療崩壊した武漢やイラン、イタリアの致死率は、現時点でそれぞれ 4.55%、5.69%、8.95%と非常に大きい。しかし、日本の医療システムがダイヤモンド・プリンセス号でみせた能力は、致死率 0.98% だ。今後感染する日本人は、クルーズ船乗客よりもずっと若い元気な人々だろうから、致死率はずっと下がることが期待できる。それで、今後の致死率は 0.1% と仮定しよう。それでも患者が8,000,000人となると、死者は8,000人という計算になる。これは、かなり悲惨だ。オリンピックを開催できる状況ではない。

一方、現在の日本の状況は、そんなに悪くない。死者は累計で28人だ。8,000人に対して28人ということは、言葉は悪いが進捗率で0.35%に過ぎない。政府の発言がいかに根拠が薄いか分かる。

感染のピークが過ぎなければ、海外から観客が大勢くるとは思えないし、過ぎたらすぎたで死者が膨大に出て、オリンピックどころではない。政府もIOCも予定通り開催すると言い張っているが、これは経済対策のようなもので、1年後にワクチンが大量に出回るまではやはり開催できるとは思えないね。

ちなみに、これまでの約1カ月の死亡者数推移をグラフにすると以下だ:

心が痛むのはイタリアの状況だ。一日に700人の死者を出すことは、悲惨だった武漢の比ではない。イタリア、イラン、スペインを合わせると死者は毎日800人以上だが、これは2月中旬の武漢の死者数のおよそ5倍だ。

さらに、それを追う地域が、フランス、イギリス、米国、その他の国々だ。まだ、先頭集団に比べるとそれ程深刻とは言えないのかもしれないが、今後どのように推移していくのだろう。

感染拡大と信仰

中国からCovid-19の感染が急速に伝わった国は、イラン、イタリア、韓国で、その共通要因として、中国との密接な経済関係と宗教活動が各種報道でもとりあげられている。

世界の国々の宗教的価値観の状況を端的に示したものに、イングルハート-ヴェルツェル図 http://bit.ly/2wUktR8がある。この図の縦軸が宗教vs世俗で、イランとイタリアは信仰の篤い国々に位置付けられている。

この図で韓国は、日本や中国と同様に世俗的な文化と位置付けられているが、今回、韓国社会で新興宗教が強い影響力を持っていることが確認された。

今急速に感染が拡大している国々はどこかを明確にするために、感染確認数とその増加速度で地図を作ったのが昨日の散布図だが、今日(2020-03-14)時点では以下のようになっている。

イタリアとイランは、依然感染が拡大しているが、韓国は一部の人々が信仰する新興宗教の問題なので、感染は急速に縮小している。

韓国同様に世俗的な北欧の国々(オランダを含む)では、今日時点では感染拡大が比較的制御されているように見える。感染原因の多くはイタリアへの旅行であり、季節的な要因に過ぎないのかも知れない。

感染確認数と増加速度の大きさでイタリアに続く勢いで懸念されるのが、スペイン、ドイツ、フランスと米国だ。

ドイツとフランスは、むしろ世俗的な国ぐにに分類されるので、北欧同様に、今後感染拡大が制御されやすいのではないだろうか。

心配なのは、信仰の篤いとされるスペインと米国だろう。 老若男女、人々が集まる宗教活動が日常になっている国々は、ウイルスにとっては好都合な場所だ。