福島に関するフランスの報道記事について、私がフランスの友人に説明したこと

日本の報道機関には大きく二極あって、まったく異なる報道をしています。欧州の報道機関は、その一方の情報のみを使う場合が多いのです。
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の福島に関するドキュメンタリは日本では全部は見られませんが、おそらく原発反対の立場での日本での報道を、さらにセンセーショナルにまとめているようです。こうした報道機関の日本の記事は割り引いて受け取る必要があります。

ほとんどのジャーナリストは、毎日、時間に追われています。毎日毎日原稿の締めがありますから、正確性を犠牲にして、報道の納期やビジネス価値を優先するのです。

正確な記事を書くには、ゆっくり時間をかける必要がありますが、それは、しっかりしたビジネス基盤と豊富な資金が欠かせないと言うことです。

欧米の報道機関の内、日本顧客向けビジネスとして本格的に日本に進出しているのは Wall Street Journal であり、その記事は日本でも尊重されています。

日本の報道機関で、財源がしっかりしていて、報道が正確で信頼できるのはNHKです。

福島に関しては、NHKの特集サイトがあります。子どものガンの記事や、海水汚染に関するリアルタイムモニターがあります。英語版やフランス語版がないのは残念です。

子どもの甲状腺検査
がん・がん疑い103人

〈原発事故
海水リアルタイムモニター〉

このNHKの二つの報道は正確です。しかし、それを理解するには、科学リテラシーが必要です。特に、統計学の知識はmustです。これら二つの記事を以下に補足説明します:

・ガンに関しては、異常値は検出されたけれど、汚染されていない地域との統計的有意な差はなく、福島が他の地域に比べ特に悪いとは科学的には主張できないと言うことです。

 身体の異常は、放射線がなくても起こりうると言う、当たり前の話しか測定できていないのです。関連するWall Street Journalの記事はここ

・海水の方は、もちろん汚染はあるけれど、基準値をはるかに下回っていると言うことです。

 Bq/Lは見慣れない単位ですが、放射性ラジウムであれば、1リットル中に10-11g 含まれていると言うことにあたります。10万tの超巨大タンカーに入れても、0.003 gにしかならないのです。しかも、この1Bq/Lの量でさえ、福島の海では検出できない日々が多いのです。

 記事に「汚染水が毎日数100トン放出されている」とあり、それは事実でしょうが、放射性物質の量で言えば、多くてもラジウム換算で0.00001g前後に過ぎません。

「西洋の衝撃」の時代

世界史と現代を「文化」の視点で展望すると、現代は「西洋の衝撃」の時代となる。16世紀ころから始まって今も続いている。
文化軸で歴史はきわめてゆっくり流れるが、長期的には変化は著しい。
衝撃に対する流れには二極あり、一つは日本やトルコの「脱亜入欧」だし、もう一方はイスラム原理主義だ。
ロシアは脱亜入欧の元祖と思っていたが、プーチンはもう違うと言っているらしい。それに影響を与えたのは中国かも知れない。
韓国では、脱亜入欧が日本化とオーバーラップしていて「裏切り」のように言う人がいるらしいが、中国では政府以外ではあこがれの方が多いのではないか。
日本人にとって「脱亜入欧」は自然だが、この方向で価値観の多様化が進むと、社会はアノミー(明白な規則や規範、価値基準がない社会状態)化しかねない。
日韓や日中関係も「西洋の衝撃」の視点で見ると、腑に落ちることが多い。私の人生もそんな気がする。

参考までに、私の放送大学での講義資料を添付します。