ホフステードの長期指向・短期指向の次元で、中国は日本とほぼ同じ点数です(それぞれ87と88)。そしてこれは米国の26に比べるとはるかに長期指向側に位置しています。
つまり、中国人も日本人も時間軸上の将来に重点を置いているのに対し、米国人は過去、あるいは今に重点を置いているのです。
中国人の長期指向の一つの典型は、「管鮑之交(かんぽうのまじわり)」の故事でしょう。幼いころからこの四字熟語で「堅い友情は子々孫々の繁栄に繋がる」と中国人は学びますから、一度友人になるとその関係は生涯あるいはそれ以上続きます。
友人の間での貸し借りは、日本人はできるだけ短期に精算しようとしますが、中国人は貸し借りも絆の一つと考えますから、お互いに早期に精算しようとはしません。
中国人が長期指向だと言うホフステードの考えに、このように私も異存はないのです。しかし、そう思えない日本人は多いと思います。その理由は何なのでしょうか。
「内集団への忠誠」(自分の属する集団の義務遂行を大切に思う感情。世界の人びとが普遍的に持っている)の意識の有無が関係しています。
会社に属することが子々孫々の繁栄に繋がると信じれば、中国人は長期指向でいろいろな提案をし、自主的に取り組むと思います。反対に、会社への帰属意識が低いと、中国人にとって会社は他人事であり、短期の付き合いであり、チームワークも何もないのです。
どの集団に自分が属しているか、その集団の身内と思っているかは、人びとの道徳観や価値観に大きな影響を与えます。
会社に属することが長期の利益に繋がると考える日本人は多いのですが、中国人は、会社は董事長や総経理の持ち物だと言う意識が強く、帰属意識は通常高くはありません。
そうした従業員の帰属意識を高めるためには大変な投資が必要なのだと言う意味で、私の講義では火鍋チェーンの事例を照会しています。