異文化対応力を鍛える!@蘇州 Q/Aなど

蘇州のS-SBFと言う土曜の午後を使った二月に一回の勉強会で「異文化対応力を鍛える!」と題して2.5時間の講演をしてきました。52名の参加者は、S-SBF設立以来最多記録とのことでした。7割が日本人、3割が中国人という構成でした。以下は、講義後に受講者にお送りしたサマリーのメールです。

 

「異文化対応力を鍛える!」受講者各位、

第48回講師の北岡です。

9/12(土)の私の講演に参加していただきありがとうございました。
・2時間で異文化対応力を理解することはほぼ不可能なので、
・その多面的なアプローチを紹介し、まず興味を持っていただくこと
に努めました。いかがでしたでしょうか?

異文化への対応では、学習サイクルを回し続けることがとても大切です。

・異文化接触で違和感を覚えたら、講義を思い出してください。
・そして、象使いが違和感を好奇心に切り替えて、
・講演で学んだ知識を使いながら、学習サイクルを回すのです。
・これを毎日・毎週のように続けると、異文化対応力を鍛えることができます。

逆にこれを続けないと、講演内容は長期記憶の底へ沈んでいき一つの想い出となるだけで何も変化しません。

頑張ってください。

当日会場であるいはアンケートで、いくつか質問がありましたので回答します。

Q1. 中国人が長期指向・集団主義とは思えない。反対に感じる

 回答を以下の私のブログ(中国人と長期指向次元軸)に載せましたので、ご参照ください。

 会社に属することが子々孫々の繁栄に繋がると信じれば、中国人は長期的に考えいろいろな提案をし、自主的に取り組む筈です。この辺りは、会社への帰属意識と関係しているのです。詳しくはブログへ。

Q2. 日本文化は今後どう変化していくのか

 変化が非常にゆっくりであり、変化を予想した人は私の知る限りいないと会場で回答しました。しかし、どう変化して欲しいかは、以前、私のブログ(日本と文化的価値観で近い国々)に書いたことがあります。

 「文化は、その担い手の世代が交替するにつれゆっくりと変化します。それがどのように変わるか予想はできないのですが、期待することはできます。文化的価値観で日本に近い国々の中で、より幸福な国々はスイス、ベルギー、オーストリア、ルクセンブルグです」(抑制と放縦:IVRは幸福軸として考えられた次元軸です)。こうした国々をモデルにして、仕事だけでなく、もっと家庭を大切にすることなどで、より幸福な国になりうると思っています。 

Q3. 放送大学の私の授業で、再度学習したい

 来年度に入学すれば、浜松(5/7-8)あるいは文京キャンパス(5末と秋)で受講できます。

Q4. 中国を中心にした地図はないか?

 質問があれば見せようと準備していました。以下のブログ(中国からの文化的距離で描いた地図)に転載しました。

以上、よろしくお願いします。

以下は当日の講義風景。



中国からの文化的距離で描いた地図

日本文化の孤立状況を正確に捉えるためにコグート=シン指数を使って地図を作ったが、中国に住む人びとから中国が中心の地図も作ってくれとの要望が多々あったので、作りました。

中国と文化的に近くにある国は、香港、シンガポール、インドネシア、ベトナム、インド、バングラデシュです。距離=1では、台湾も韓国も入りません。

他の地図も同様ですが、この地図で正確なのは、中心からの距離と個人主義・集団主義の方向感、そして男らしさ(右)と女らしさ(左)だけです。5次元空間での位置関係を2次元に射像しているので、限界がどうしてもでるのです。

中国人と長期指向次元軸

ホフステードの長期指向・短期指向の次元で、中国は日本とほぼ同じ点数です(それぞれ87と88)。そしてこれは米国の26に比べるとはるかに長期指向側に位置しています。

つまり、中国人も日本人も時間軸上の将来に重点を置いているのに対し、米国人は過去、あるいは今に重点を置いているのです。

中国人の長期指向の一つの典型は、「管鮑之交(かんぽうのまじわり)」の故事でしょう。幼いころからこの四字熟語で「堅い友情は子々孫々の繁栄に繋がる」と中国人は学びますから、一度友人になるとその関係は生涯あるいはそれ以上続きます。

友人の間での貸し借りは、日本人はできるだけ短期に精算しようとしますが、中国人は貸し借りも絆の一つと考えますから、お互いに早期に精算しようとはしません。

中国人が長期指向だと言うホフステードの考えに、このように私も異存はないのです。しかし、そう思えない日本人は多いと思います。その理由は何なのでしょうか。

「内集団への忠誠」(自分の属する集団の義務遂行を大切に思う感情。世界の人びとが普遍的に持っている)の意識の有無が関係しています。

会社に属することが子々孫々の繁栄に繋がると信じれば、中国人は長期指向でいろいろな提案をし、自主的に取り組むと思います。反対に、会社への帰属意識が低いと、中国人にとって会社は他人事であり、短期の付き合いであり、チームワークも何もないのです。

どの集団に自分が属しているか、その集団の身内と思っているかは、人びとの道徳観や価値観に大きな影響を与えます。

会社に属することが長期の利益に繋がると考える日本人は多いのですが、中国人は、会社は董事長や総経理の持ち物だと言う意識が強く、帰属意識は通常高くはありません。

そうした従業員の帰属意識を高めるためには大変な投資が必要なのだと言う意味で、私の講義では火鍋チェーンの事例を照会しています。