東京オリンピックを予定通り本当に開催できるのか?

政府やIOCはオリンピックを予定通り開催すると言い張っている。

確かにこの状況で開催できれば奇跡であり、安倍晋三の名前は世界の歴史に残るだろう。では、それが本気だとしたら何を意味するのか考えてみた。

海外から感染した観客が7月の日本にたくさん来るわけだから、日本人の大半はそのころまでにウイルスに対する抗体を持っていなければならない。国家としてのウイルス抵抗力がオリンピック開催の前提なのだ。

国民の x% が一旦感染して抗体を作って快復したとすると、ウイルスの日本での感染力はその時点で (1-x)% に下がる。例えば、x = 66% とすると、感染力は 33% に下がるということだ。

オリンピックの会場や宿泊施設等々付近にいる日本人は何人ぐらいなのだろうか?仮に6千万人とすると、その 66% は 4千万人だ。新型コロナウィルスは、感染しても80%の人は発症しないから、発症するのは800万人ということになる。日本には有床の医療施設が約15,000ある。800万人をこの施設でこなすには、1施設当たり533人の患者に対応する必要がある。

これを7月までの4か月間120日で割ると、4.5人/(日・施設)になる。こう考えると、まったくの夢物語ともいえないのかも知れない。

ただ、問題は死者がどれだけ出るかだろう。

医療崩壊した武漢やイラン、イタリアの致死率は、現時点でそれぞれ 4.55%、5.69%、8.95%と非常に大きい。しかし、日本の医療システムがダイヤモンド・プリンセス号でみせた能力は、致死率 0.98% だ。今後感染する日本人は、クルーズ船乗客よりもずっと若い元気な人々だろうから、致死率はずっと下がることが期待できる。それで、今後の致死率は 0.1% と仮定しよう。それでも患者が8,000,000人となると、死者は8,000人という計算になる。これは、かなり悲惨だ。オリンピックを開催できる状況ではない。

一方、現在の日本の状況は、そんなに悪くない。死者は累計で28人だ。8,000人に対して28人ということは、言葉は悪いが進捗率で0.35%に過ぎない。政府の発言がいかに根拠が薄いか分かる。

感染のピークが過ぎなければ、海外から観客が大勢くるとは思えないし、過ぎたらすぎたで死者が膨大に出て、オリンピックどころではない。政府もIOCも予定通り開催すると言い張っているが、これは経済対策のようなもので、1年後にワクチンが大量に出回るまではやはり開催できるとは思えないね。

ちなみに、これまでの約1カ月の死亡者数推移をグラフにすると以下だ:

心が痛むのはイタリアの状況だ。一日に700人の死者を出すことは、悲惨だった武漢の比ではない。イタリア、イラン、スペインを合わせると死者は毎日800人以上だが、これは2月中旬の武漢の死者数のおよそ5倍だ。

さらに、それを追う地域が、フランス、イギリス、米国、その他の国々だ。まだ、先頭集団に比べるとそれ程深刻とは言えないのかもしれないが、今後どのように推移していくのだろう。