「日本はこのままだと3週間後には中国のようになる、イタリアのようになる」とか人々を煽るような発信が多いが、本当だろうか?
政府が本当に何もしなければ急速に悪化することもあるのだろうが、世界にそんな政府は見当たらず、ほぼ例外なく右往左往している。その悪戦苦闘の結果としての各国の感染状況で国々を4地域に分類してみた。悪戦苦闘にも学ぶべき成果がないとは言えないからだ。
各国のWHOへの申告値は毎日大きく変動する。報告者も人間なので休息をとることもあるのだろう。そこで以下の尺度で分類した。
死亡数の3日間の平均値が
A地域: 100超 (2020-04-02現在、8地域)
B地域: 10超 (同じく11地域)
C地域: 5超 (同じく7地域)
D地域: 5以下 (同じく181地域)
A地域:3日間の平均で死者が毎日100人超発生している地域
A地域の多くの国々では医療崩壊が進みロックアウトが行われている。
その先駆けである中国ももちろん1月からA地域だったが、2月26日にB地域へ、3月19日にC地域へ、3月27日にD地域へと終息してきた。1月23日の武漢封鎖後34日間で最悪の状況を脱してB地域になり、さらに32日かけてC地域となった計算だ。
オランダとベルギーは、国としてはB地域となるが、文化的にも地理的にも近く感染推移も類似しているのでルクセンブルクと合わせてベネルクスとして集計した。
ドイツは善戦が伝えられていたが、死者数では3月31日にイランを超えた。善戦したのは、初期段階で大量の検査を行ったことにあるとされているが、この方法が有効なのは感染の初期段階にかぎられるとクラスター対策班の押谷教授が指摘している(https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf)。
日本のニュースでは、A地域の状況が盛んに報道されるため、それらとの比較で日本の対応が議論されがちだ。しかし、この最悪の状態に至らなかった国々が大半だ。学ぶことがあるとしたら、踏みとどまっている国々にこそあるのではないかとも思うのである。好奇心と謙虚さはこういう時こそ大切だ。
B地域:3日間の平均で死者が毎日10人超発生している地域
ロックアウトと医療崩壊のぎりぎりの国々だ。
スイスの昨日(4月1日)の死亡数は78人であり、医療崩壊の瀬戸際だろう。Le Mondeの3月20日付報道から試算した「死亡数の3倍の重症者がいる」なら、それは234人であり、それに日々対応するのに病院はてんてこ舞いだろう。
イスラム圏に属するトルコが、イランと同じ道を歩むのかは注目される。同じイスラムでも、宗教指導者の力はあまり強くない。同じことはインドネシアについてもいえるのかもしれない。
スウェーデンは、感染スピードを抑えながら集団免疫で乗り切ろうとする数少ない国だ(WSJ 2020-04-01)。同じ戦略だった英国では、感染スピードを抑えきれずにA地域入りしてしまった。スウェーデンの英国との違いは住人の多様性が限られていることだ。ほとんどの人々は個人主義的で、感染が広がりやすい大家族はない。政府の打ち出す施策に従って人々がウイルスに対抗できるている。ただ、ソマリア出身の移民のように大家族でくらす人々では死亡者が多くでている。
新型コロナに対しマスクの有効性が注目されていて、「外出にはマスク着用」を義務づけたのがオーストリアだ(WSJ 2020-04-01)。旧オーストリア帝国の国々の中にも、同様の措置を取る国々が出ている。
マスク着用国のインドネシアは、3月19日にB地域入りしたが、その後、大きく状況悪化せずに踏みとどまっている。このまま踏みとどまることができれば、日本にとって貴重な教訓になるだろう。
どの国がこのまま医療崩壊せずに踏みとどまるか、あるいは、感染スピードを抑えきれずにA地域入りするかが注目される。
C地域:3日間の平均で死者が毎日5人超発生している地域
1日当りの死者が5人から10人に踏みとどまれている国々だ。
この地域は周辺の国々に比べ状況は悪くないため、「感染拡大が落ち着けば、4月半ばの復活祭(イースター)休暇明けに外出自粛などの制限を緩和する(デンマーク首相)」などの希望的な発言や、自国の政策を自慢する国すらもある。
ここ数週間のウイルスとの闘いで、自国の医療システムの能力と政府規制とのバランスの中でまずまずの成果をあげ、政府も国民もある程度の余裕があるのだろう。
ただ、数値を詳しく見ると、死亡数に増加傾向が見られないのはマレーシアだけであり、今後、政府の対策は二転三転する可能性がある。多分、この臨機応変に対応する柔軟性が政府と国民にあれば、状況はそんなに悪くならないかもしれない。
D地域:3日間の平均で死者が1日5人以下の地域
世界の国と地域の大部分はいまだこのD地域に属している。
ここには、中国のようにやっと終息しつつある国もあるし、日本や韓国のようにしぶとく感染を抑え続けている国々もある(ちなみに日本の死亡数は3日平均で1.7)。
これら中国とその周辺のマスク着用国を除くと、D地域のほとんどの国々は中国から地理的・文化的に非常に離れていることが、今回、幸運に働いているように思える。
その抱える人口から、最も注目されるのは、インドだ。
そのインドと日本を比べると、インドの感染確認数が10を超えるのは3月5日で、日本の2月初めと比べて1カ月の遅れがある。武漢からインドへの直行便がないのも幸いしただろう。
日本の最初の死者は2月14日だったが、インドでは3月13日で、やはり1カ月遅れだ。感染は中国から直接ではなく、中東や米国の印僑経由でもたらされているのではないだろうか。
インドは中国から遠い国であり、どうなるかはこれからだ。
ちなみにインドと日本の死亡数の推移をグラフにした。すでにインドは死亡数で日本を超え始めている。1カ月前の3月1日のイタリアの死亡数は8である。インドはこの数値を1カ月遅れで昨日超えた。