日本語の語彙の非常に多くが中国語に由来する。みんな知っている音読みの語だけでなく、訓読みと思っている「うま(馬)」や「うめ(梅)」も明らかに中国語起源だ。そんなものも含めて全部取り去って、ほんとうの訓読みだけの生活を思考実験してみる。
そこで気付くのが、「てら(寺)」と言う言葉だ。この発音は、中国から来たとは思えないのだが、漢字が伝来する前の日本列島に、寺があったのだろうか?
訓よみの起源から考えれば、漢字伝来の前に寺があったはずだし、「寺」と言う概念もあったはずなのである。でも、ほんとうにそうなのだろうか?
この私の疑問に答えてくれたのが、漢字伝来以前の弥生・古墳時代に伝わった朝鮮語からの借用語(日本語千夜 小林昭美-050)と言う可能性だ。
朝鮮の言葉を、今のカタカナ語のように取り入れた時代、朝鮮の文化にあこがれていた時代があったのだと言う可能性だ。
そう言えば、さっきの「うま(馬)」や「うめ(梅)」も朝鮮半島起源なのかも知れない。
ただ、小林昭美さんの論文の中で、借用語らしく思えるのは「てら(寺)」の他は「くつ(靴)」や「うま(馬)」ぐらいでしょうか。それ以外のほとんどは、縄文時代から日本にあっても不思議でない概念であり、言葉のように感じます。言葉が借用されるのは、新しい物や概念を語りたいと思う時です。水と言う言葉の語源となると、数万年以上昔の話であり、別の議論が必要でしょう。